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2014年07月25日

NVIDIA Inspector 覚書(おぼえがき) オーバークロック編 - Overclocking セクション

その8、Overclocking セクションです。
オーバークロックって・・・ご存じですか?


Overclocking - NVIDIA Inspectorついにここまできましたね。最終章となるオーバークロックについてのお話です。とはいえ、これは「自己責任の極み」ともいえる項目であり、あまり深く解説はしません。下手をすると、さらに1.5倍は文章を書かなくてはならないでしょうしね。そして、お持ちのグラフィックスカードを「破損してしまう恐れのあるテクニック」ですので。さらには、完全にPSO2とは関係のない領域になってしまいますから(汗笑)。

ただ、いつぞやかのコメントにありました「Inspectorの映像部分だけ取り出されても、ほしい情報が見つからない」ということもあり、でしたら今回一とおりを見渡せる覚書にしましょうといったのも、そのためです。現状、ここ最近の検索語句に「NVIDIA Inspector」の文字が一番に出るようになってしまったようで、Googleさんで引っ張っても・・・あら(@_@)


ともなれば、「それを超えるためには、自分でさらに踏み込んだお題を記せないとならないですね」ということで、今回ここまで記しています。分量的にも雑誌についてくる小冊子1冊分のボリュームにはなっているかと思いますけど・・・はて。

おそらく今後再び細かくまとめることはないと思われますが、今回の話題だけでも十分伝わったことでしょう。略称で気安く呼べるほど、簡単に使えるソフトでは ない ですよということも。

一方、概要さえ押さえれば、変更箇所はこのあたりかなという目星もつけられるようになったはずです。私の狙いはそちらにありますので・・・。

では、最後を飾るオーバークロック編、まいりましょう。


オーバークロック(Over Clocking 略してOC)とは・・・機器の動作周波数を「定格の最高を上回る周波数にする」こと。

全くわからないという方は、Wikipediaの文献でも参考にしてみてください。つまるところ、「グラフィックスカードの動作スピードを購入時よりも引き上げ、より高い性能を発揮できるようにする」ことです。よくCPUやメモリなどで行われる部分となるのですが、それをグラフィックスカードにも応用してしまおうというのが本項です。

一例としてDirectX 11対応GPU仕様一覧表でもご覧になれば、「ご自身がお持ちのグラフィックスカードの定格動作周波数」が記されています。これが基準となります。

車をお持ちの方であれば、その基準からはずれた レッドゾーン と呼ばれるメーターギリギリの赤いラインがあることはご存じかと思いますが、その枠をも超えて動かそうといった部分になります。大変ですね。ゆえ、動かすことができたとしても、最悪破損する可能性・・・リスクがあることを覚えておかないとなりません。

なぜそんなことができるのか? という部分ですが、上記Wikipediaさんの 原理 部分の一つを引用すると

『CPUやメモリ等は工業製品であり、出荷した全ての製品が最悪の条件の下で所定の性能(定格)を発揮できるよう、ある程度の余裕(マージン)をもたせて製造されている。このマージンを期待し、定格以上のクロックを加えて動作させる。』

、ということになります。


つまり、お持ちの商品には「安全動作を見込める範囲を広めにとられている」可能性があり、その部分を最大限生かそう、といったものになります。ゆえ、商品によっては個体差ということで、大幅にオーバークロックができたり、あるいはほとんどできなかったりなど、ばらつきが常につきます。

そんな部分を活用してまで性能を上げたいの? という疑問を持たれる方もいらっしゃるかも知れませんが、確実に「いる」わけなのです。下手をすれば1ランク上のカードに匹敵する性能を出せる場合もあるみたいですしね(そこまではさすがに稀ですが・・・)。


そのためこの分野で世界大会が行われたりするほどで、いわば競技の一つとして見なせる分野でもある、と考えておけたらいいでしょうね。最近ではなんだか、この部分をコミック化されたものもあるみたいですし(中身は至って真面目な本です)。よくわからないという方は、この本から読んでみると少しなりご興味をもたれるようになるのではないでしょうか。

のだめカンタービレで有名な、二ノ宮知子さんが手がける漫画「87CLOCKERS」(通称ハナクロ)です。概要はこちらでもどうぞ。音大生が世界一早いパソコンを目指すという異色のものですが、監修にこの道の第一人者であるDuckさんが当たるなど、話題性も十分なタイトルです。ご興味ある方は試し読みをしてみるといいのかも(300ページもの大ボリューム)。

ある意味、この本はとても救世主になっているのではと思います。こんなマニアックな世界を、高名な女流作家さんで描いていくわけなのですから。すごいの一言なのです。


まず、お断りとして記しておきますが、オーバークロックについてはInspectorよりも他社製の、外部ユーティリティーを使用されるのが便利です。そちらであればオーバークロックだけにとどまらず、ファンの回転速度などを 柔軟に 調整できる機能も備わっているため、便利なのです。

が、すべてでそのような動作が保証されているわけではなくあくまで「対象のカードのみ」、という部分に気をつけておかなくてはなりません。ただ、一昔前あたりからのものとなるGTX 400番台以降あたりであればほぼ動かせるものとは考えられますので、自己責任をしっかりと把握できる人だけトライしてみたらいいでしょうね。

代表どころとしては、MSIさんのAfterBurnerや、EVGAさんのPrecision Xシリーズなどがあります。Precision Xは現在配信停止中ですが(ソフトウェア使用権周りで問題が発生したみたいです)、・・・追々再開されるでしょうということで。


WarningInspectorではシンプルでありながらも、細かいところを調整できるものとして用意されています。起動した後、画面の一番右下にある「Show Overclocking」ボタンを押すと警告表示が現れますので、はい で進めます。すると同じサイズくらいの画面が右側にも用意されるのですが、目につくのは4つほどの横長の棒グラフがあるはずです。これはオーバークロックのさじ加減を行うもので、右側がプラス、左側がマイナスの調整となります。

ここで、各項目の意味をまとめておきますね。


ボタン群

「GPU Select」:モデルナンバー表示、複数GPUがある際は選択・切換可能
「Show/Hide Overclocking」:オーバークロックメニューの表示/非表示
「Set Fan」:ファン回転数を指定の%に固定する。Autoにチェックを入れると、温度制御による自動回転に。別途外部ユーティリティーソフトを使うとそちらが優先され、Autoのチェックは外れる
「Create Clocks Shortcut」:指定した状態(選択したパフォーマンスレベルに応じたクロック周波数/電圧)をデスクトップに保存、次回以降そのショートカットをダブルクリックすれば自動的にその内容が反映されるようになる
「Apply Defaults」:初期値を呼び出す(各種設定値がリセットされる)
「Apply Clocks & Voltage」:指定したクロック周波数、電圧を反映する


Overclocking

「Performance Level [0] - (P8)」:左側のレベル[0][1][2][3][4]などが、右側のパフォーマンスレベル(P12)(P8)(P5)(P2)(P0)などに対応、複数存在する。レベルが上がるほどパワーステート(駆動領域:Px)が上がり、その段階に応じたクロック速度、電圧で動作するようになる。いわば車のシフトチェンジに相当。最高域となるBoostステータスは[P0]となる
「Unlock Min」:クロック周波数/電圧の下限値解除。押すたびにRelock-Unlock(固定-固定解除)が繰り返される
「Relock Max」:クロック周波数/電圧の上限値固定。押すたびにUnlock-Relock(固定解除-固定)が繰り返される
「GPU Clock (Base Clock Offset) - [x MHz]」:指定のコアクロックで駆動させる(規定値より増減させる)
「Memory Clock (Memory Clock Offset) - [x MHz]」:指定のメモリークロックで駆動させる(規定値より増減させる)
「Shader Clock - [x MHz]」:指定のシェーダークロックで駆動させる。必ず GPU Clock×2 の性質がつきまとう(GTX 500番台以前)
「Voltage (Voltage Offset) - [x V]」:指定の電圧で駆動させる(規定値より増減させる)

以下はKepler(600番台:GPU Boost 1.0)のみ
「Power and Temperture Target」:消費電力と温度との相関関係で、ブースト可能な範囲でブーストする。基準は100%

以下はKepler(700番台以降:GPU Boost 2.0)のみ
「Priorize Temperture」:温度ターゲット。指定温度までブーストし続けるも、すぐに頭打ちになりやすいため、冷却能力が鍵を握る


Overclocking・・・と記してもなんのこっちゃになりそうですが、要は「自分で自由に、(主にオーバークロックなので)プラス方向へとスライダーを動かし、Apply Clocks & Voltageボタンを押す」>その後ゲームを試し、正常動作するかを確認>動くようならその値で稼働させることが可能・・・といった感じです。試していただければ把握されると思いますが、50MHz程度でしたら簡単にあげられてしまうと思います。いい個体なら100~150MHz程度までブースト可能になったり。

そこまで引き上げられるとカード的には1ランク上のカードに匹敵してしまう場合もあり、なかなか侮れないものです。が、元々そのような周波数で動かせるように設計されてはいませんし(検査をしていないだけ、ともいえるかもしれませんけど)、万が一そのスピードで常用し、短いうちに故障してしまったとしても「自己責任」ですので、誰にも文句は言えません。あくまで、自分で楽しめる範囲で楽しむものとなります。


引き上げるときの注意点として、最大値を上げ下げできる項目は「Performance Level [x] - (P0)」となります。レベルの中の x の文字は、カードによってレベルが細かく分かれている場合もあるため、一概に何と決めることはできません。が、平均して3~4のあたりのようです(GTX 600番台)。それよりも大切なのは、パワーステートと呼ばれる P の文字の部分。こちらが「P0」となっているかどうかが大きなポイントになります。

P0がいわゆる、GTX 600番台以降で設けられた「GPU Boost」機能で動かせる最高周波数を制御するレンジとなるため、この部分に切り換えてから調節する必要があります。その他のP3なりP8なりは「ビデオ再生時やアイドル(待機)時」となるため、最大性能を上げる部分とは異なってしまいます。その点だけ気をつけましょうね。


また、GTX 600番台以降(Keplerコア)の場合、クロックの刻みとしては「13MHzごと」になりますので、気をつけてくださいね。その倍数になっていなければ、近い値に近似されるだけですので。その様子は左側=初期画面の下部をご覧いただくと、「Current Clock」「GPU Clock」「Default Clock」の3つが見つかるはずです。順に「現在『実際に駆動している周波数』」「『ご自身で指定した』オーバークロック込みの周波数」「カードの基準となる標準周波数」。

ですので、ご自身が決めた動作周波数は「GPU Clock」に表示されていますが、実際に動く値は一番上の「Current Clock」になっているということです。もしもここにズレが多少なりある場合、GPU Clockの値を、Current Clockの値に揃えておけると、精神的に落ち着くのかなと思います。

たとえば上記の画像で言えば、Base Clock Offset を +118MHz としているがため、Default Clockが915MHzに対し(GTX 690の基準値です)、GPU Clockはそちらに118MHzを足した 1033MHz 。その下のメモリも同様に、オフセット値が+659MHzに対し、Default Memoryが3004MHz - GPU Memoryが3663MHzとなっているはずです。操作すれば、すぐにわかるはずなのです。


Boost Tableずれていても、特に問題はありませんのでご安心ください。あくまで「GPU Clock通りに動いていない」というときに、気をつけていただけたらという部分ですので。

その周波数制御の兼ね合いから600番台以降は13MHz刻みとなっている点を、頭の片隅にとどめておくといいかもしれません。こっそり出すと、こんな感じの「ブーストテーブル」なるものが、VBIOS(ビデオバイオス)上に決められていて。原則クロックテーブルの数値上でしか、動作しないのであります。

もちろんオーバークロックをすると発熱や消費電力があがりますので、何かしら対策をしなくてはなりません。その時に役立つのは・・・何でしょうか? そう、昨日紹介したモニタリング機能です。

いかがですか。このようにありとあらゆる項目が、相互に、密接に結びついています。だからこそInspectorは決して侮ることのできない、広範な知識を要求されるソフトに仕上がっているわけなのです。


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ふう~。何とか、書き上げるのでした。総文字数53,000あまりと、結構な量になっちゃいましたね。データが消える前はもう少々長かったものなので、再編集で削減できるところは削減して、といった感じで1週間にわたるお題となりました。とっても奥が深~いソフトだということが、把握いただけましたか?

実はこのオーバークロックもより突っ込んだ制御方法もあったり(コマンドライン記述の方法もあります)、その他隠し技もあり、そして今後機能が拡張される可能性もあったりと、他に類を見ないほどのチューニングユーティリティーになっているのでした。


昔から海外製のソフトにつきまとう検索語句・結果は「日本語 使い方」。確かに、それがあれば便利ではあるのですけど、結局こういったツールって日本語訳する前に、自分で使い倒してしまえば、あまり気にならないものでもあると思うのですよね。

私も、英語は褒められたものではなく、片言話せるかどうか程度・・・中学生レベル相当なのかはいざ知らず、話せる自信がないですからね。そんな人でも、ここまでやれるわけなのですから。


後は情熱でしょうか。「このソフトを使って、自分の気に入ったゲームをさらにいいものにしてみせる」という気持ち。それを私は「熱い情熱」と記しているわけですが。

いずれにしましても、これでみなさんの希望は叶えられたはずです。後は、ご自身で、好きなタイトルをいろいろと設定し、より密度の高い時間が送られますように。お祈りしています。


後日簡単に使い方ムービーを作成しておこうとは思いますが、一とおり、詳細な部分についての解説は本日でおしまいとなります。非常に長い文章でしたが、ご精読いただき、ありがとうございました('-'*)

From : lavendy | 23:59